開催趣意
デジタル技術の進展は、私たちの社会に大きな変化をもたらしています。企業活動や行政サービス、日常生活の様々な場面でデジタル化が進み、AI技術の活用も急速に広がっています。こうした技術は、業務の効率化や新たな価値の創出に加え、人口減少や人手不足への対応などの社会課題の解決を支える基盤となっています。さらに、生成AIに続き、高度な推論能力や自律的なタスク実行能力を有するフロンティアAIへの注目も高まっており、デジタル技術がもたらす可能性は一層広がっています。
その一方で、サイバー空間における脅威も広がりを見せています。ランサムウェアによる被害、サプライチェーンを狙った攻撃、フィッシング詐欺、重要インフラや自治体を標的とした事案などが引き続き発生しており、その影響は企業や組織だけでなく地域社会や住民生活にも及んでいます。また、AI技術の発展に伴い、精巧に作られた偽・誤情報やディープフェイクの拡散、AIを悪用した攻撃など新たな課題も顕在化しています。デジタル技術の恩恵を安心して享受するためには、信頼性と安全性の確保が不可欠であり、サイバーセキュリティの重要性はますます高まっています。
こうした状況の中、我が国では、能動的サイバー防御の推進や国家サイバー統括室(NCO)の発足をはじめ、サイバーセキュリティに関する制度や体制の強化が進められています。しかし、サイバー空間の安全を守るためには、国や専門機関だけでなく、企業、自治体、教育機関、関係団体、そして地域で暮らす一人ひとりが、自らを守ることに繋がるとの自覚を持ち、自らの役割を果たすことが重要です。デジタル技術が社会基盤となった今だからこそ、多様な主体が連携しながらデジタル社会を支えていくことが求められています。
四国では、産学官の幅広い関係者が連携しながら、地域に根差したサイバーセキュリティ活動に取り組んできました。「サイバーセキュリティシンポジウム道後(SEC道後)」は、その中心的な取組の一つとして、全国の専門家や実務者、行政関係者、研究者、学生に、知見の共有と交流の機会を提供してきました。また、地域の幅広い団体や個人の連携活動コミュニティである「四国サイバーセキュリティネットワーク」の取組を通じて、人材育成や情報共有を推進し、地域におけるサイバーセキュリティ意識の向上と人的ネットワークの形成に寄与してきました。こうした積み重ねは、地域社会のレジリエンス向上を支える大きな力となっています。
今回のSEC道後2027は、「地域で支える安全・安心なデジタル社会」をテーマに開催します。AIの活用が広がり、社会のデジタル化が進展する中、安全・安心なデジタル社会を実現するためには、お互いの顔が見えるという地域ならではの強みを生かしながら、多様な主体が相互に連携し、それぞれの立場から取り組むことが不可欠です。本シンポジウムでは、サイバーセキュリティの課題や取組について理解を深めるとともに、産学官の幅広い関係者が知見や経験を共有する機会を提供します。また、自治体関係者を含む幅広い参加者の交流を促進し、新たな連携の創出につなげます。
SEC道後2027が、参加される皆様にとって新たな学びと交流の機会となるとともに、それぞれの地域や組織におけるサイバーセキュリティの取組をさらに前進させる契機となり、安全・安心なデジタル社会の実現と地域の持続的な発展につながることを願っています。
令和8年10月
サイバーセキュリティシンポジウム道後実行委員会 実行委員長
松山大学 教授・愛媛大学 名誉教授 小林 真也

