開催趣意
通信インフラの高度化やスマートフォンの普及等に伴い、デジタル技術を活用した多様なサービスは国民生活において不可欠なものとなっています。
中でも、近年のメタバースやデジタルツイン、生成AI等の新たな技術・サービスの進展は、生産性の向上や新たなビジネスチャンスの創出を促すとともに、労働力不足の克服、地域経済の活性化など、我が国が抱える様々な社会的・経済的課題の解決に資することが期待されています。
こうしたデジタル技術の飛躍的な進化とともに、国民生活におけるサイバー空間への依存度が高まる中、AI技術を悪用した新たな脅威が生み出されるなど、巧妙化・複雑化するサイバー攻撃への対応は喫緊の課題となっています。
特に、サプライチェーンの交雑化・グローバル化によって生じた脆弱性を狙った攻撃による被害は増加の一途を辿っており、大手自動車企業や医療機関などが機能停止に陥る事例も発生するなど、その脅威は深刻なものとなっています。
こうした中、政府は、「自由、公正かつ安全なサイバー空間」を実現するため、「DXの推進に向けたリスク対策の強化」、「政府機関や重要インフラのレジリエンスの向上」、「国際連携・協力の推進」を柱に、地域・中小企業におけるサイバーセキュリティ対策の促進や、医療分野をはじめとする重要インフラ事業者等のサイバーセキュリティ対策強化などの取組を推進しています。
サイバー攻撃は、地域や業種、事業規模を問わず、地域住民の福祉を保障する病院もターゲットとなる事案も相次いで発生していることから、地域の企業や組織、団体が各地で情報収集・相談でき、また、関係者が地域のセキュリティ向上に向けた取組を推進するための「共助」の仕組みの重要性が増しています。
四国では、「サイバーセキュリティシンポジウム道後(SEC道後)」を10年以上前から毎年開催し、全国から専門家や関心の高い方々を幅広くお招きして、サイバーセキュリティの重要性について広く普及・啓発を図るとともに、参加者同士の連携・交流を深める場として、取組を継続してきたところです。
また、2022年12月に発足した産学官の幅広い組織との連携による「四国サイバーセキュリティネットワーク」では、年間を通したセミナー・演習の実施、情報共有の強化等により、四国地域全体におけるサイバーセキュリティに対する意識の向上や人材育成につながる取組を推進しています。
今回のSEC道後は、「サイバー攻撃に負けない地域づくり ~新たな脅威に備えた連携と共助~」をテーマに、地域住民が安全で安心して暮らせるサイバー空間を確保するため、政策動向をはじめ、サイバー攻撃の最新動向や対抗するための技術・手法等について多様な側面から議論を深め、地域におけるセキュリティ対策の強化につなげる機会にしたいと考えています。SEC道後が安全・安心なデジタル社会の構築と地域の発展に役立てば幸いです。
2023年11月
サイバーセキュリティシンポジウム道後実行委員会 委員長
愛媛大学大学院 教授 小林 真也