開催趣意
コロナウイルスと共存する社会の進展に伴い、オンライン会議やテレワーク、オンライン診療、教育のICT化など、社会経済活動全般のデジタル化が加速しています。それを後押ししているのがIoTやAI、AR/VRなどのデジタル技術の飛躍的な進化です。
また、近年は、メタバース等による仮想空間の活用や、現実世界と仮想空間を結びつけるデジタルツインの導入、次世代インターネットWeb3.0の市場の拡大など、仮想空間と現実世界との融合・相互作用が進みつつあり、こうした技術革新による新たなビジネスモデルの創出や労働力不足の克服、地方の活性化など、日本が抱える様々な課題解決への展開が期待されています。
一方で、新たなセキュリティリスクへの対応が大きな課題となっています。サイバー空間があらゆる主体が利用する公共空間となる中、巧妙化・複雑化の一途を辿るサイバー攻撃の脅威が高まっていることに加え、国家や重要インフラに対するサイバー攻撃が増加するなど、深刻な情勢が続いています。
また、ランサムウェアによる攻撃は年々エスカレートしており、自動車関連企業や半導体関連企業などのサプライチェーン全体が影響を受ける事案や医療機関の診療業務に支障を来す事案が発生したほか、不正アクセスによる個人情報・機密情報流出でサービス停止を強いられるなどの事態も発生しています。
こうした中、政府は、社会全体のデジタル・トランスフォーメーション(DX)と合わせて、サイバー空間の公共空間化に伴う「誰一人取り残さない」サイバーセキュリティの確保(“Cybersecurity for All”)に向けた取組を継続的に推進しています。
また、昨年12月に改定した国家安全保障戦略には「能動的サイバー防御」を新たに明記するなど、サイバー攻撃に対する国レベルの対応方針の導入に向けた整備が始まっています。
サイバー攻撃は、地域や業種、事業規模を問わず、地域住民の福祉を保障する病院もターゲットとなる事案も相次いで発生していることから、地域の企業や組織、団体が各地で情報収集・相談でき、また、関係者が地域のセキュリティ向上に向けた取組を推進するための「共助」の仕組みの重要性が増しています。
四国では、この「サイバーセキュリティシンポジウム道後(SEC道後)」を10年以上前から開催し、毎年、全国から専門家や関心の高い方々を幅広くお招きして、サイバーセキュリティの重要性について広く普及・促進を図り、地域におけるサイバーセキュリティの啓発や人材育成につなげる取組を継続してきたところです。
そして、昨年12月には新たに産学官の幅広い組織との連携による「四国サイバーセキュリティネットワーク」が発足し、情報共有の強化、セミナー・演習の実施等により、四国地域全体におけるサイバーセキュリティ対策の向上に資する取組を推進することとなりました。
今回のSEC道後は、こうした動きも踏まえ、「地域SECUNITYの力でサイバー攻撃と戦う」をテーマに、地域住民が安全で安心して暮らせるサイバー空間を確保するため、政策動向をはじめ、サイバー攻撃への対策に対抗する技術や攻撃事例等について多様な側面から議論を深め、対策等につなげる機会にしたいと考えています。参加者同士の連携を深め、ネットワークの形成を図るため、講演のほか、様々な議論、情報交換、交流の場も提供いたします。SEC道後が今後とも安心・安全なデジタル社会の構築と地域の発展に役立てば幸いです。
2023年3月
サイバーセキュリティシンポジウム道後実行委員会 委員長
愛媛大学大学院 教授 小林 真也