開催趣意
2020年、新型コロナウイルス COVID-19 の感染の広まりは、私達の日常生活、経済活動に大きな影響をもたらしています。
否応なく求められた在宅勤務により、ネットワークを利用した活動が、これまで以上に増え、サイバー空間を介した業務遂行上の安心・安全の必要性が、人々の関心事として、より強く求められています。また、外出を控えるという日常生活は、インターネットを利用した娯楽や、SNSの利用、ECによる購買といった行動に、人々を向けさせています。サイバー空間は、その役割と期待を一層強め、情報セキュリティの重要性がこれまで以上に高まっています。
一方、広くサイバー攻撃全般に目を向けると、攻撃の目的が多様化しています。かつては攻撃者が、その技術的優位性を見せつけるといった愉快犯的な攻撃が大半でした。近年ではネットワークの普及に伴って、経済的な利益を得ようとする攻撃が急速に増加しました。ハクティビズムを動機とした攻撃、更には、国家が主体として行っていると疑われる事例も発生しています。その攻撃対象は個人を狙ったものから企業・団体・政府組織を狙ったものまで幅広く、多岐にわたっています。
攻撃手法の日々進化と、社会におけるICTの普及により、セキュリティ脅威はますます巧妙化・複雑化しています。あらゆるモノと人がつながる「IoT」の普及が、利便性の拡大・向上と引き換えに、脅威の影響範囲と深刻度の拡大につながっていることなども、その事例といえます。
実際にIoT、仮想通貨を含むFintech、重要インフラ、サプライチェーンを狙った攻撃等により、情報漏えいに加えて、直接的な金銭被害、業務・サービス障害が国内外で生じており、経済社会の持続的な発展や国民生活の安全・安心等が脅かされています。
サイバーセキュリティシンポジウム道後実行委員会では、サイバー空間における情報セキュリティの重要性について広く普及・促進を図り、地域におけるサイバーセキュリティ関係の啓発や人材育成につなげるため、愛媛県松山市において毎年全国のサイバーセキュリティに造詣の深い方々を幅広く招聘し、サイバーセキュリティシンポジウム(SEC道後)を開催してきました。
9回目となるSEC道後2020は、残念ながら、集会型での開催を断念せざるを得ませんでしたが、サイバーセキュリティの重要さに鑑み、「ニューノーマルとセキュリティ」をテーマとして、オンライン型で開催することにいたしました。
人々の活動の場が、実空間からサイバー空間へと、その比重が高まったこの状況であるが故に、尚更、持続的な対策など、サイバーセキュリティのあり方について、サイバーセキュリティ政策、サイバー攻撃に対抗する技術や事例等について多様な側面から議論を深め、対策等につなげる機会にしたいと考えています。
サイバーセキュリティシンポジウム道後が、安全で便利な高度情報通信社会の構築と地域の発展に役立てることを祈念し、皆様方からのご支援、ご高配を賜りますことをお願い申し上げます。
令和2年8月
サイバーセキュリティシンポジウム道後実行委員会 委員長
愛媛大学大学院 教授 小林 真也