サイバーセキュリティシンポジウム道後(SEC道後)

開催趣意

 我が国でも昨年1月頃から猛威を振るいはじめた新型コロナウイルス感染症は、1年以上が経過したにもかかわらず、終息の兆しは見通せず厳しい状況が続いています。先ずは、この感染症の犠牲になった方々にお悔やみを申し上げますとともに、患者の皆様の一日も早い回復をお祈りします。また、忘れてならないのが、医療従事者の勇気を持った日々のウイルスとの戦いです。 心から感謝したいと思います。

 さて、コロナ禍によって2007・2008年頃のリーマンショックに端を発した世界規模の経済危機の際に使われた「ニューノーマル」という言葉を再び聞くようになりました。それまで当たり前だった出勤やFace to Faceの会議が、リモートワークやWeb会議といった「新しい働き方」へ変化しました。

 例えば、これまでもリモートワークの重要性は指摘されてきましたが、導入がなかなか進まない状況が続いていました。しかし、コロナ禍によって、BCPの観点から導入を余儀なくされ、急速に広がりましたが、一方で、導入することに追われ、そこに潜む脅威に思いが至らなかったことから、その脆弱性を狙ったサイバー攻撃が数多く報告されています。昨年の夏には、安全を確保する手段である「VPN(仮想私設網)」を使ったネットワークでさえ攻撃を受け、大手企業が管理するIDやパスワードなどの認証情報が大量に流出した事案は記憶に新しいところです。コロナ禍をきっかけに改めてリモート時代の課題が浮き彫りになったところです。

 また、コロナ禍をきっかけに、企業の生産・販売などのビジネス、政府・自治体の行政活動など、あらゆる分野でデジタル化が進められ、データとデジタル技術を高度に活用したデジタル変革(デジタルトランスフォーメーション)への関心が高まっています。ポストコロナの時代にあっては、今までの常識がデジタルによって過去のものに変わる新たな社会が到来すると考えられ、社会全体で今まで以上にサイバーセキュリティの必要性・重要性は高まることと思います。あらゆるモノと人がつながる「IoT」の普及が、利便性の拡大・向上と引き換えに、サイバー攻撃による脅威の影響範囲と深刻度の拡大につながっているわけで、私たちのシステム環境は日々進化するサイバー攻撃の脅威を駆逐できる高度なサイバーセキュリティの技術とともに、ユーザ側のより高い意識と対応が必要になってきます。

 サイバーセキュリティシンポジウム道後実行委員会では、時々の脅威に焦点を当て、サイバー空間における情報セキュリティの重要性について広く普及・促進を図るとともに、地域におけるサイバーセキュリティ関係の人材育成につなげるため、毎年サイバーセキュリティに造詣の深い方々を全国から幅広く招聘し、サイバーセキュリティシンポジウム(SEC道後)を開催してきました。

 記念すべき10回目となるSEC道後2021では、感染症拡大防止を鑑み、前回同様、オンラインで開催することといたしました。今回は「安全で安心して暮らせる社会の実現 ~新しい働き方と生活~」をテーマに、コロナ禍をきっかけに、大きく変わった人々の生活や働き方に焦点を当て、ICT利活用を前提とした新しい日常のためにはどのような課題があり、また、より脅威が増すサイバー犯罪に対して講じるべき対策はどのようなものなのか、様々な事例を踏まえながら多角的に議論を深め、新しい働き方と生活の構築につながる機会にしたいと考えています。

 サイバーセキュリティシンポジウム道後が、安全で便利な高度情報通信社会の構築と地域の発展に寄与できるシンポジウムとなりますよう関係者一同取り組んで参ります。皆様方からのご支援、ご高配を賜りますことをお願い申し上げます。

2021年2月
サイバーセキュリティシンポジウム道後実行委員会 委員長
愛媛大学大学院 教授 小林 真也



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